2010-12-19

映画ノルウェイの森

映画ノルウェイの森を見てきました。

Yahoo!映画のレビューでは、日を重ねるごとに、点数が低くなっていたので、さてどんなものなのだろうと。
http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id336172/

この映画を観るにあたって、小説を再読しようと思っていたのですが、実家に保管されているため、結局読み返すことなく映画を見ることになりました。
小説の印象ですが、熱心なファンでもないので詳細は忘れきっており、「草原」の記憶だけが強く残っているというレベルです。

自分にとっての、原作を見て映画を観る場合と、原作を見ずに映画を観る場合では、前者では自分ならどう作るかの視点で観てしまうので、純粋に映画を観るという点では、今回のようなパターンのほうが良いのかもしれません。

さて、ざっと感想を書いておきます。

監督はトラン・アン・ユン。
ベトナム生まれで、12歳からフランスで育ち感性が磨かれた監督です。

作風は予想通りで、ヴェネチアで称されるような作風といいますか、日本でいうとキタノ映画や、ちょっと昔のウォン・カーウァイ作品をずっと見続けてきた人たちにとっては、ある程度そういうものとして鑑賞できる作品だろうなという印象をもちました。世間ウケはしません。

ということで、Yahoo!映画での総合点2.83(12/18時点)というのは、それくらいのポイントで妥当だと思いました。
個人的にも、映画のレビューの点数でいうと2.5点位の印象です。ただし、一方で映画好きの人やクリエイターの人がこの作品を見た場合は、その後、ハナシのネタになるようなソースがふんだんに散りばめられています。

・菊地凛子の涙の演技は鳥肌モノです
恐ろしさを感じるほどの圧巻の演技でした。現場にいたら相当ビビッてたと思います。

・ノルウェイの森の草原の認識がアップデートできた
小説を読んだ時にイメージしていたものに極めて近い草原でした。唯一の違いは、草の長さがイメージしていたものよりも長かったのですが、整備されていたら不自然だろうし、映画のほうが適切だろうと思いました。いい草原でした。

・村上春樹のイスラエルでのスピーチを思い出しました
「高くて、固い壁があり、それにぶつかって壊れる卵があるとしたら、私は常に卵側に立つ」
有名なのはこのフレーズですが、卵側に立っていて、それを描写しているのが村上春樹なという作家だった…とノルウェイの森と重ねあわせながら見てました。登場人物は、不条理な状況でもその流れに身を任せて受け入れて、葛藤を抱えながら日常を生きていきます。その生き様を、読者に対して提示して、お前らどう思うんだと問いかけるのが春樹テイストなんでしょうか。
きっと村上龍なら、卵側に立ち、さらに立ち向かう主人公を描くんでしょうけど。
※村上春樹氏エルサレム賞受賞スピーチ全文
http://www.yomiuri.co.jp/national/murakami/

・トラン・アン・ユン監督の日本語の理解力
おそらく監督は日本語を知らないので、会話のリズムやテンポが変です。棒読みに見えるのは役者の演技力ではなく、脚本(翻訳家)の問題でしょう。動詞が文の最後に来るという、日本語の独特の文法を知らなかったために、特に2人での掛け合い的な会話がもう違和感ありまくりです。動詞が主語のすぐあとに来るフランス語や中国語だったら、さぞテンポが良い会話として成立していたんだろうなと思いました。

・水原希子について
本作が女優デビューのモデルさんですが、不思議な魅力と存在感を持っています。
今後、様々なキャスティングの場で彼女の名前が挙がってくることになるのでしょうが、使い方は非常に難しいと思われます。ただ、ぜひ潜在的な才能を引き出してあげられる演出家が現れることを希望。
水原希子オフィシャルページ:http://www.kiko-m.net/

・僕は今どこにいるんだ?
この映画において、監督のメッセージは、一体何だったんだろうというところで人それぞれ感じることが違うんだろうなという小説同様のエンディングを迎えました。The Social Networkのデヴィッド・フィンチャーのように原作をベースに人間の本質を描き出し、自身の強烈なメッセージまでを盛り込んだ演出ではなく、卵側に立った演出でした。

映画を楽しもうと思っている人にはオススメではありませんが、映画について語りたいと思っている人にはオススメの映画です。