2009-09-06

番組の権利者とはいったい誰?

テレビ、新聞、雑誌のこれからを指して、 マスメディアの凋落が所々で声高に叫ばれてますが、 そちらに関しての個人的な見解はまた別の機会に譲るとして、 今回は、知的財産関連について興味深いネタがあったので書いてみます。

ヤフー株式会社のプレスリリース(2009.9.4)より引用


ヤフー株式会社(以下、Yahoo! JAPAN)は本日、株式会社フジテレビジョン(以下、フジテレビジョン)および日本テレビ放送網株式会社(以下、日本テレビ)との間で、両社がYahoo! JAPANの子会社である株式会社GyaO(以下、GyaO)に出資することで合意いたしました。
近年、インターネット上には動画があふれ、なかにはさまざまな問題を発生させているものも少なくありません。結果、映像の正当な権利者に正当な対価が支払われる仕組みが破壊されつつあり、良い映像を生み出す土壌が侵されつつあります。これはインターネットの将来にとって、またインターネットで映像を視聴する文化を成熟させるためにも解決していかなくてはいけない問題です。


このプレスリリースを見て、正直噴き出しそうになりました。
細々と言いだすと切りがないので、大きく2点に要点を絞ります。

①テレビ局の広告収入は、今後どうあがいても減り続けるということ
②そもそもテレビ局は正当な権利者に正当な対価を支払う仕組みなんてなかった

まずは①について。
近年、インターネット上の動画が、さまざまな問題を発生させていることは事実ですが、 この問題が解決されたとしても、テレビ局の広告収入が今後も減り続けることには変わりありません。

これまでのテレビ局のビジネススキームは至極シンプルでした。
1.番組を作る(コンテンツ)
2.電波で流す(伝送ルート)
3.テレビ受信機で見せる(プラットフォーム)

最もテレビ局にとって大きかったのは、放送法により守られていた電波部分で、これが新規参入の大きな障壁であり、結果として東京の場合だとキー局の5局で、企業がテレビ(映像)分野に投じてきた広告費を分けあってきていたわけです。

単純な話、キー局が5局ではなく、10局になるよう電波の使用許可を与えていたら、テレビに投じられる総広告費は変わりないので、1社あたりの広告収入は半分になっていたということです。また、番組を見られるプラットフォームがテレビ受信機1つだけであったことも重要なポイントです。

20世紀末頃から、これまで放送法に守られ寡占状態であった映像伝送ルートに変化が起こります。

映像は電波だけではなく、ケーブルテレビ、BS・CS、そしてインターネットで伝送することが可能になりました。

さらにプラットフォームにも変化が起こり、テレビ画面ではなくても、ケータイ電話、パソコン画面、またハードディスクレコーダーに録画して好きな時にCMをスキップして映像を見ることが可能となりました。

単純な話、これまでテレビ局が放送法により寡占していた映像分野の広告費の争いに、さまざまな分野から参入できるようになったことが、テレビ局の取り分を減らしている要因です。
(※ほかにもさまざま理由があるけど、あくまでも代表的な例えです)

ということから、違法動画などの問題が解決されたとしても、テレビ局の広告収入の低下は、決して防ぐことのできない運命であることには違いありません。

続いて②について。
「映像の正当な権利者に正当な対価が支払われる仕組みが破壊されつつある」というくだりは、ある意味、爆笑に値します。ここで指す権利者はおそらく、テレビ局とタレントと言い変えてもいいかもしれません。

映像の正当な権利者は、テレビ局だという理屈で話は展開されているわけですが、本来、正当な権利者は作品を作り出したクリエイターであると考えるのが普通でしょう。

小説に関していうと小説家でしょうし、音楽に関していうと歌手や作曲家、つまり作品の権利が個人に帰属しているわけで、テレビに流れる映像(番組)の権利者は、法人であるテレビ局だという、これまでのマスの論理の延長線上で語られているわけです。

現在のテレビ番組は、テレビ局が局員だけで作っているものはごく僅かで、ほとんどの場合、テレビ制作会社が制作に携わっています。

テレビ局→大手テレビ制作会社→孫請け制作会社という発注に関しては、あるある大事典でのヤラセ問題でも大きな問題となり、企業から出された広告料1億円が、末端の制作会社に、番組制作費として渡った際には800万円になっていたということも世間に知られている事実としてあります。

正当な権利者に正当な対価が支払われる仕組みが本当に機能していたならば、番組が再放送された時には、担当した孫請け会社の番組ディレクターに対価が支払われるなどのことがされるべきでしょうが、そんな話はこれまで一度たりとも聞いたことがありません。

結局は、これまでは伝送ルートとプラットフォームを寡占していたおかげで、24時間という枠の中で、どのコンテンツを流すかを決定する編成という部分で、大きな権力を局が握っていたことで、制作著作を局が買いきることができたわけです。

ただし、今後はコンテンツホルダー自身が、どの伝送ルートで、どのプラットフォームに出していくかを決定していくことになるのではないかと思います。マスメディアではなくるであろうテレビ局にコンテンツを独占させる筋合もないわけですし。

というわけで、今回のヤフーのプレスリリースは前時代的なメディアの姿そのものですし、これといって注目すべき点はなにもないわけですが、2010年の制定に向けて総務省が動いている放送法の改正は一気に現在の動き(伝送ルートのオープン化)を加速するものになりそうです。

特に映像に携わるクリエイターは一度俯瞰して状況を分析して、数年後どのように立ち振る舞うべきかを各自検討するタイミングがいまだと思います。

個人的には、マスメディアの「マス」はなくなると思いますし、大手広告代理店の「大手」もいずれなくなると思います。

いずれにせよ、メディア産業全体が、劇的に変わることは間違いなく、その変化に耐えるための準備をクリエイターはすべきでしょう。